静かな余韻📚『C線上のアリア』上巻だけ読む人、下巻だけ読む人

こんばんは。今日は湊かなえさんのこの小説を紹介します。

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介護のお話ということで、正直、最初は身構えずに読み始めていました。
けれど読み進めるうちに、ぐいぐいと引き込まれ、最後には「やはり湊ミステリだ」とうなる展開と伏線回収が待っていました。


夫と元カレ、どっちもひどい

この物語の主人公・美佐。
彼女の夫が、まあ、ひどい。
認知症が進行しているらしい母親の変化を認めようとせず、家の乱れはすべて美佐のせい。
母親は完璧だと思いたいのか、それとも現実から目をそらしているのか。

さらに、美佐の元カレ・邦彦。
自分の母の下の世話をすべて嫁に押しつけた挙げ句、「臭いから家でご飯を食べたくない」なんて……何様!?
「男に母親の下の介護なんてできないよ」って、昭和ですか。


上巻だけ読む人、下巻だけ読む人

作中に登場する比喩、「上巻だけ読む人」「下巻だけ読む人」は、まさにこの二人の男性を象徴しているようでした。

  • 上巻だけ読む人:過去だけを見て、今の現実を見ようとしない
  • 下巻だけ読む人:今だけを見て、相手の歩んできた過去を理解しようとしない

どちらも、自分に都合のいい現実しか見ていない。
物語の終盤で、彼らが少しだけ現実(妻)に向き合おうとする描写はありますが……それで許していいのか?という思いは、正直ぬぐえません。


弥生さんの家と過去

物語は、美佐が夫と義母の暮らしに疲れ果て、叔母・弥生さんのもとへ向かうところから始まります。

久しぶりに訪れたその家は、かつての面影もないゴミ屋敷。
けれど、美佐が少しずつ片づけていく中で、弥生さんの過去が浮かび上がってきます。

嫁・姑の確執、心の傷。
でも弥生さんの夫・公雄さんは、その間に立って妻を守った人でした。
結局、嫁姑関係を左右するのは、間に立つ「夫」の姿勢なのだと、しみじみ感じます。


介護に必要なのは、「上巻」を読む力

介護にあたっても、その人のだけを見るのではなく、
どんな人生を歩んできたのか(=上巻)を知ろうとする姿勢が必要なのだと感じました。

今は汚れてしまった部屋も、昔はきれいだった。
今は意思の疎通が難しくなった人も、かつては優しくて、面白くて、芯のある人だったかもしれない。

相手の「上巻」に耳を傾ける――
それは、介護だけでなく、すべての人間関係に通じる大切な視点なのかもしれません。


たぬき的・メモ
「読んだ」というより、「考えさせられた」1冊。
自分が誰かの介護をする立場になったとき、ちゃんと上巻を読める自分でいたいな、と思いました。


今日のたぬき文庫のよりみち帖は人生を考える本を紹介しました。最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
あなたの「上巻」、誰かに読んでもらえていますか?

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こんにちは、たぬきです。
高校で国語を教えながら、学校図書館の運営もしています。
本のこと、野球のこと、ゲームのこと…
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