『光のとこにいてね』(一穂ミチ)―― 正反対の境遇でありながら惹かれ合う2人

 こんばんは。たぬきです。今日は本屋大賞2023年ノミネートの1冊を紹介したいと思います。この年の本屋大賞ノミネート本は、どれが選ばれてもおかしくないレベルの高い本ばかりでした。この本もとても好きで、図書館を訪れる生徒にもよくお薦めしています。

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光のとこにいてね [ 一穂 ミチ ]
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読み進めると思い浮かぶ歌

めぐり逢ひて
見しやそれとも
わかぬまに
雲がくれにし
夜半の月かな
 ── 紫式部

やっとめぐり逢えたのに、そのぬくもりを確かめる間もなく、別れがやってくる。
月が雲に隠れるように、目の前からふっと消えてしまうような関係。

そんな出会いと別れを何度も繰り返しながら、この物語のふたりは、魂の奥で惹かれ合っていきます。


ふたりは正反対の境遇にあります。
正反対のように見える彼女たちが出会い、
近づいてはぶつかり、
離れてはまた、思い出すように戻ってくる。

その関係はとても不安定で、
でもだからこそ、ものすごくリアルで、美しいと感じました。


光のとこにいてね

何度も繰り返されるタイトルの言葉、
「光のとこにいてね」

最初はシンプルな願いとして響いていたこの言葉が、
読み進めるうちに少しずつ、その意味合いを変えていきます。

物語が進むたびに、この言葉が積み重ねた意味が読者の中に残り、
最後には、自分自身にも向けられるような気がしてきます。

自分の気持ちに正直でいる難しさ


この物語の背景には、「不自由さ」があります。

子ども時代には親の都合で、
大人になっても「普通」や「常識」に押し流されて、
思うように生きられない場面がたくさん出てきます。

「自分の気持ちに正直でいる」
それがこんなにも難しいことなのか、と改めて考えさせられました。

でも、だからこそ、
一歩を踏み出すふたりの姿がまぶしく感じられるのです。


この小説は、友情や恋愛という言葉におさまりきらない感情が描かれています。
それはもっと素朴で、でももっと本質的な、
「あなたがあなたでいてくれることが、ただうれしい」というような感情。

ふたりはお互いのすべてを理解していたわけではありません。
でも、それでも「この人が、ここにいてくれてよかった」と思える関係を築いた。

それがどれだけ尊いことか。
それがどれだけ、難しいことか。


そして、ラスト。
すべてを描ききらず、
けれど希望をたしかに感じさせてくれる終わり方に、私は救われました。

ああ、どうかこのふたりが、
これからも、たとえ離れていても、
それぞれの「光のとこ」で生きてくれますように。

そう、心から思えるラストでした。


🌕こんな方におすすめです

  • 誰かと深く関わったことがある人
  • 離れてしまったけれど、忘れられない誰かがいる人
  • 言葉にできない気持ちに、静かに名前をつけたい人

📖あとがきのような、たぬきのひとこと

人はきっと、すれ違いながらも、魂のどこかでつながることができる。
そんな可能性を、この物語はそっと照らしてくれました。

夜の雲に隠れた月は、見えなくなっても、そこにある。
ふたりの関係も、きっとそれに近いのだと思います。

そして私自身も、誰かに「光のとこにいてね」と思えるような生き方をしていけたら。
この本は、そんな静かな願いを、心に残してくれました。


たぬき文庫のよりみち帳、
今日は月と光をめぐる、切なくてやさしい物語のご紹介でした🌙📖

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
また、そっと心がふれた本があれば、ここで綴っていきますね。

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