やわらかな物語たち📚『対岸の家事』 (朱野帰子)——その大変さを、ようやく想像できた

タイトルを見た瞬間、「ああ、うまい表現だな」と思いました。
火事は、対岸にあればどこか他人事に見える、「対岸の火事」という言葉がありますが、
「家事」もまた、やっていない人には見えないし、
時に「大したことない」と軽く扱われてしまう。

でもこの小説は、そんな「見えない仕事」に光を当ててくれる物語でした。



見下される側から、見上げられる側へ

主人公は専業主婦。
周囲の「バリキャリ」たちは、そんな彼女を「時代遅れ」とか「情報弱者」などと見なしています。
最初は私も、そんな言葉の数々に心がざわつきました。

でも、物語が進むにつれ、彼女を「対岸」から見ていた人たちが、
家事という仕事の重みや、大切さに気づき始めるんです。

特に、最初は偏見丸出しだったパパ友が、
「この人がしてきた仕事を、これ以上、馬鹿にするな」と言う場面では、
胸がじんわり熱くなりました。


家事は、誰かがしてくれているから成り立つ

私は今、仕事と家事の両立に日々追われています。
「働いてるんだから仕方ない」と自分に言い訳して、
部屋が散らかるのを見ないふりしていると、
だんだん気持ちまで落ちてくるんですよね。

かといって、じゃあ専業主婦になったら楽かというと、
家にいる分、家事の「手抜き」が許されないプレッシャーもある。
家族の生活環境を整えるという、終わりのない仕事。
これは立派な「フルタイム」だなと、改めて思いました。

専業主婦って、すごい仕事なんです。


「当たり前」は、感謝の対象だった

この小説を読んで、ふと自分の母を思い出しました。
私の母も専業主婦でした。
毎日、変わらず整った家に帰れるのが「普通」「当たり前」だと思っていたけれど、
実はものすごく手間と心配りが詰まった毎日だったんだ、と。

「もっと感謝を伝えておけばよかった」
読後に、そんな思いがふっとこみ上げてきました。


家事の価値に気づいたからこそ

この物語の主人公もまた、家族や周囲の変化をきっかけに、
自分のやってきたことに、少しずつ誇りを持てるようになっていきます。

たとえ社会的な評価がなくても。
たとえ外から見えなくても。
誰かの暮らしを支える仕事に、「無価値なもの」なんて一つもない。

小説では描き切られなかった父との関係が、
ドラマ版ではまた違う展開になると聞いて、探して見てみようと思います。


おわりに

「対岸の家事」――それは、
誰かが「してくれている」からこそ、わたしたちは日々を回せているんだと気づかせてくれる言葉です。

専業主婦も、ワーママも、パパたちも、
そして子どもたちも、
みんながちょっとずつ「対岸」から「こちら側」を見つめ合えたなら。
家の中は、きっと今よりもう少しあたたかくなる気がします。

たぬき文庫のよりみち帖、今日は当たり前と思っていた「家事」の価値について感じたことをお話ししました。最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

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