静かな余韻📚『spring』――恩田陸が見せてくれた、総合芸術としての物語

こんばんは!たぬきです。たまには芸術鑑賞もしたいけれど、なかなか足を運ぶ時間がない・・そんな時ってありますよね。今日はそんなあなたにおすすめの小説、恩田陸さんの『spring』です。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

spring (単行本) [ 恩田 陸 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2025/7/9時点)


「まるで舞台が見える」
「音楽が聞こえるようだった」
そんな表現を、過去の恩田陸作品に何度も感じてきました。

けれど今回読んだ『spring』では、そうした感覚のすべてが、
一段と鮮やかに、立体的に迫ってくるのを感じました。


萬春という、舞台そのものの存在

物語は、ある天才バレエダンサー萬春(よろず・はる)をめぐる、
4人の語り手の回想によって紡がれていきます。

語り手が変わるたびに、萬春の姿も少しずつ表情を変え、
それぞれの視点が、「人を語る」という行為の曖昧さと深さを教えてくれます。

恩田陸さんの筆致は、『チョコレートコスモス』では舞台芸術を、
『蜜蜂と遠雷』では音楽の本質を描いてきましたが、
本作『spring』はその集大成のように感じられました。

舞台の上の動き、音楽、演出、美術。
そして、語られる言葉の“間”までもが、まるでひとつの踊りのよう。


タイトル「spring」に込められた多層的な意味

「spring」は、文字通りの「バネ」や「跳ねる」の意味を持ちます。
このタイトルからしてバレエの動きそのものを想起させます。
恩田さんは、バレエという世界の外にいる読者も、
するりと舞台裏に連れて行ってくれます。
詳しくなくても、まったく怖くない。
読んでいるうちに、「バレエって総合芸術なんだ」としみじみ思わされました。


📌たぬき的・ぐっときたポイント

  • 語り手が変わるたびに浮かび上がる萬春という存在の奥行き
  • 舞台・音楽・演出までをも言葉で描く、恩田さんの“表現力の集大成”
  • 文学的要素がちりばめられ、言葉の背景を考える楽しみがある
  • パラパラ漫画や栞など、本としての“装丁美”にもこだわりが感じられる

あとがきのような、たぬきのひとこと

実は読みながらずっと、こう思っていました。
「この物語、山岸凉子先生の絵で読みたい…!

あの繊細で幻想的な線で描かれる萬春の姿。
静かに、でも圧倒的に舞台を支配するあの雰囲気は、
まさに『アラベスク』の系譜ではないかと。

けれどどうやら、山岸先生は2021年以降は新作を描かれていないようです。

私の中で、萬春くんのイメージは、
どこか人間味のある厩戸王子みたいな存在でした。

文学と芸術が交差するこの物語。
春の光の中で、ぜひ味わってみてほしい一冊です。

今日は恩田陸さんの『spring』を紹介させていただきました。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

プロフィール
このサイトの管理者
たぬき

こんにちは、たぬきです。
高校で国語を教えながら、学校図書館の運営もしています。
本のこと、野球のこと、ゲームのこと…
気の向くままに、よりみちしながら綴っています。📕
ふらっと立ち寄ってもらえたらうれしいです。🌱

たぬきをフォローする
静かな余韻
たぬきをフォローする
タイトルとURLをコピーしました