
こんばんは!たぬきです。たまには芸術鑑賞もしたいけれど、なかなか足を運ぶ時間がない・・そんな時ってありますよね。今日はそんなあなたにおすすめの小説、恩田陸さんの『spring』です。
「まるで舞台が見える」
「音楽が聞こえるようだった」
そんな表現を、過去の恩田陸作品に何度も感じてきました。
けれど今回読んだ『spring』では、そうした感覚のすべてが、
一段と鮮やかに、立体的に迫ってくるのを感じました。
萬春という、舞台そのものの存在
物語は、ある天才バレエダンサー萬春(よろず・はる)をめぐる、
4人の語り手の回想によって紡がれていきます。
語り手が変わるたびに、萬春の姿も少しずつ表情を変え、
それぞれの視点が、「人を語る」という行為の曖昧さと深さを教えてくれます。
恩田陸さんの筆致は、『チョコレートコスモス』では舞台芸術を、
『蜜蜂と遠雷』では音楽の本質を描いてきましたが、
本作『spring』はその集大成のように感じられました。
舞台の上の動き、音楽、演出、美術。
そして、語られる言葉の“間”までもが、まるでひとつの踊りのよう。
タイトル「spring」に込められた多層的な意味
「spring」は、文字通りの「バネ」や「跳ねる」の意味を持ちます。
このタイトルからしてバレエの動きそのものを想起させます。
恩田さんは、バレエという世界の外にいる読者も、
するりと舞台裏に連れて行ってくれます。
詳しくなくても、まったく怖くない。
読んでいるうちに、「バレエって総合芸術なんだ」としみじみ思わされました。
📌たぬき的・ぐっときたポイント
- 語り手が変わるたびに浮かび上がる萬春という存在の奥行き
- 舞台・音楽・演出までをも言葉で描く、恩田さんの“表現力の集大成”
- 文学的要素がちりばめられ、言葉の背景を考える楽しみがある
- パラパラ漫画や栞など、本としての“装丁美”にもこだわりが感じられる
あとがきのような、たぬきのひとこと
実は読みながらずっと、こう思っていました。
「この物語、山岸凉子先生の絵で読みたい…!」
あの繊細で幻想的な線で描かれる萬春の姿。
静かに、でも圧倒的に舞台を支配するあの雰囲気は、
まさに『アラベスク』の系譜ではないかと。
けれどどうやら、山岸先生は2021年以降は新作を描かれていないようです。
私の中で、萬春くんのイメージは、
どこか人間味のある厩戸王子みたいな存在でした。
文学と芸術が交差するこの物語。
春の光の中で、ぜひ味わってみてほしい一冊です。
今日は恩田陸さんの『spring』を紹介させていただきました。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

