
プロポーズの翌日に、婚約者が盗撮で捕まる。
物語はそんな衝撃のストーリーから始まります。
結婚を目前にした「幸せの絶頂」から、
一瞬で奈落へ突き落とされるような経験をする主人公。
そして読者もまた、その混乱と絶望に巻き込まれるような前編でした。
好きだから、信じたい。でも信じきれない。
主人公の戸惑いは、とてもリアルです。
- これまで信じてきた人が、突然“知らない顔”を見せたら?
- 好きだった人が、「許せないこと」をしていたら?
愛していたからこそ、信じたい気持ちがある。
でも、やってしまったことは消せない。
そんな信頼と裏切りの揺らぎの中で、何を選び取るのか。
前編は、とにかく読むのが辛くなるほど、感情が揺さぶられました。
後編が語る、「加害者」の側からの物語
そして後編は、彼=加害者側の視点へ。
彼の悩みや孤独、
どうしてそういう行為に至ってしまったのかという背景。
さらには、撮られた高校生にもまた言葉にできない心の闇や孤独があったことが描かれていきます。
もちろん、それで“許される”ことではありません。
でも、ここでようやく作品全体が「白と黒」では語れない濃いグレーの世界へと進んでいくのです。
誰かの犯した過ちを、完全には許せない。でも、それでも人は、どこまで「人として見続けられるか」
この本は、読者にそう問いかけているように思いました。
スマホ時代の“すぐそばにある加害性”
物語が強く訴えかけてくるのは、
スマホひとつで、誰もが“加害者”になりうる時代の怖さです。
写真を撮ること、シェアすること。
それがどれだけ人を傷つけることか。
そして、それは自分には関係ないと思っている人にこそ、近くに潜んでいる危うさなのかもしれません。
📌 たぬき的・ぐっときたポイント
- 前編で描かれる「愛と信頼の崩壊」が生々しく、苦しいほどリアル
- 後編で語られる“彼”の視点が、物語に深みと複雑さを加えている
- 性犯罪の現実、被害と加害の両側からの描写が丁寧
- 撮られた側、撮った側、それぞれの心の「なぜ」を真っ直ぐに描いている
- 「絶対にしない」と思っていたことが、ある日自分の隣にあるかもしれないという不安
📖あとがきのような、たぬきのひとこと
タイトルは『恋とか愛とかやさしさなら』。
どこか甘さや温度のある言葉たちが並んでいます。
でも、読み終えた後、この言葉の持つ“重み”が変わりました。
- 恋とは、信じること。
- 愛とは、裏切られたあとにどう向き合うか。
- やさしさとは、加害と被害の境界を超えて、相手を人として見続ける力。
この物語は、“やさしさ”という言葉がどれだけ痛みと覚悟を伴うものかを教えてくれる一冊でした。
たぬき文庫のよりみち帖、
今日は一穂ミチさんの『恋とか愛とかやさしさなら』を通して、
信頼とは、そして人として向き合うとは何かをそっと記録しました。
また心が静かにざわつくような本と出会えたら、ここで綴っていきますね。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました📘🫧

