
「家事か地獄か」。
このインパクトのあるタイトルに、つい手が伸びてしまいました。
読んでみると、これはただの“家事の本”ではなく、“生き方の本”だったのです。
「誰が家事をするのか」ではなく、「どう家事と生きていくか」
現代のあちこちで語られている「家事の分担」問題。
共働き世帯、ワンオペ育児、高齢者世帯……。
誰がどれだけ負担するかという議論は尽きません。
でも、筆者・稲垣えみ子さんの言葉は、もう少し深い場所に届きます。
「家事をしないということは、自分で自分を大切にすることを放棄することではないだろうか」
『家事か地獄か』(稲垣えみ子)
なるほど、と唸りました。
食べる、着る、暮らす――それらを誰かに任せきりにしてしまうと、
いざその「誰か」がいなくなったとき、人は本当に立ちすくんでしまうのです。
家事が「苦役」から「喜び」に変わる瞬間
筆者が大きく暮らしを見直したきっかけは、退職と震災による電力不足でした。
そこからの変化がすごい。
家電を手放し、収納のない家に引っ越し、モノを極限まで減らす。
すると、なんと「家事が楽しくなった」と言うのです。
私は正直、そこまで思いきれません。
でも、少しずつ“自分の生活を軽くしていく”という考え方には強く共感しました。
いつか料理が思うようにできなくなる日が来るかもしれない。
だからこそ、「できる今」に感謝して、未来の自分を助ける準備をしておく。
そんな老い支度の考え方が、今の私にちょうど響きました。
暮らしを小さくすることは、豊かさを失うことじゃない
この本を読んで気づいたのは、
「豊かに暮らす=モノが多い」ではない、ということ。
むしろ、必要最低限の道具と時間があることで、
“暮らす”ということに集中できる。
小さな炊事、小さな掃除、小さな洗濯が、
なんとも丁寧で、心を満たしてくれるのです。
私はまだそこまで身軽にはなれていませんが、
「ちょっと減らしてみようかな」と思えるようになりました。
断捨離やミニマリズムって、ちょっと構えてしまっていましたが、
「最期まで自分で生き抜くための選択」と聞くと、すとんと腑に落ちます。
たぬき文庫のよりみち帖として
この本は、家事に悩んでいる人はもちろん、
「このままでいいのかな」と人生の折り返し地点で立ち止まっている人にもおすすめです。
たとえば――
- 家事がしんどいと思っている人
- パートナーや親の介護を見据えている人
- モノに囲まれて息苦しさを感じている人
そんな人に、「ちょっと減らしてみる」「手を抜いてみる」ことの意味を、
やさしく、でもはっきりと伝えてくれる一冊です。
おわりに
「家事か地獄か」という言葉は、少し過激に聞こえるかもしれません。
でも、著者の思いはとてもまっすぐです。
自分の手で、自分の暮らしを整えること。
それが、人生を最後までまっとうするための第一歩だと教えてくれました。
わたしも少しずつ、「わたしの家事」を作っていきたいと思います。
今の自分、未来の自分、そして大切な人のために。

